◆2023年度・大学入学共通テストについて

 追・再試験も実施され、今年の受験はもはや二次試験直前となりましたので、ここでは来年度へ向けて、令和5年度の大学入学共通テスト現代文問題について、コメントします。

 全体的に見れば、「昨年度と大きな変化はない」と考えます。しかし、そもそも昨年度の追・再試験問題の段階でも既に新たな特徴(表現の修正や結論の演繹など)が見えていましたから、「昨年度と大きな変化はない」ということが、「従来と大きな変化はない」ということにまではなりませんし、まして「今後もこの形式が踏襲されるであろう」とは言えません

 さて、本試験問題、追・再試験問題とも、文章の量は想定内でしたが、それでも本試験の方は全体として少し量が多めでしたから、時間が不足した受験者は少なくなかったと思います。時間のマネジメントは、これからも必須の対策事項です。

 設問数で言えば、第2問の小説では、従来問6までであったものが、新たに問7が設けられるなど、設問が増えているのも想定内でした。2025年度に向けて(後述)、設問数が増えることは予定されていたことだからです。設問内容についても、本試験第1問の引用と写真に関する設問、対話タイプの設問(対話形式の意味はあまりなかったですね)、第2問の「マツダランプの広告の図」など、広義の「具体例類」・「複数素材の組み合わせ」による出題などは、出題されるべくして出題されたものです。

 しかし、たとえば、本試験では小説で慣用句の意味を問う設問を出題せず、追・再試験ではセンター試験のように慣用句の語義を問う設問(ア)~(ウ)を出題するなど、結局どういう出題内容・出題項目にするつもりなのか、まだ確定的ではない事柄も少なくないので、来年度を安易に予測すべきではないでしょう。また、今年度は「表現の説明」問題が表面的には問われていませんが、基礎的な事柄については、怠りなく学習しておきましょう。2021年度第1日程の問題では、第1問(評論)では表現の説明問題が出題されず、第2問(小説)でも、出題はされたものの(「羽織と時計」の象徴解釈)、従来とは設問の見かけが違っていたため、表現説明問題の学習意欲が低下したと考えられ、翌2022年度の本試験第1問で簡単な比喩表現の説明問題(問5,「豚肉」に対する比喩表現について)が出題されると、正答率が極めて低かったと推測される事態となりました。「前年度の出題の特徴」と「出題傾向」とは異なるのです。反射的な対応だけでは、厳しい結果になる可能性があります。

 さて、2025年度には、国語は90分で5大問、うち現代文は3題(110点/200点)となります。「実用国語」(具体的な情報とコミュニケーションのリテラシー)に相当する大問が追加され、設問タイプの多様化、複数の文章や資料(図表・対話などを含む)の組み合わせがいっそう顕著になるはずですが、せいぜい50分程度で大問3題は、無理があります。したがって、1年度分の設問ですべての出題要素が出し切られるのではなく、2~3年度で、一通りの設問タイプ・出題項目が出題されると考えるべきでしょう。つまり、「今年出なかったから、来年も出ない」という発想は厳禁ということですね。

 最後に、2024年度に関していえば、現学習指導要領最後の年ですから、やはり「昨年度と大きな変化はない」ということになりそうですが、最低限度の対策として、過去3年度分の本試験と追・再試験のどの設問タイプであれ、時間内でてきぱきと対応できる、というようにしておきましょう。