◆記述式自主的撤退を

まず、大学入試センター、文科省、文科相は、4野党の提出した「記述式中止法案」の審議過程で、あるいは世論とメディアの批判の強まりに押されて、受験生や受験生と関わる人々を苦しめぬいた挙句に「中止します」と言わざるをえなくなるくらいであれば、もしくは、今さら後に退けなくなって、自分たちのつまらない裏事情を受験生よりも優先したと多くの国民から非難を受ける事態に至るくらいであれば、今のうちに「受験生のためを思って自主的に制度設計を見直すことにした」と称して2021年からの記述式導入を中止するのが、賢明さを発揮する最後の機会です。

また、記述式の採点を請け負ったベネッセにしても、ここまで問題の多い記述式問題やその採点について、「現状では責任をもって採点できない」という判断を示し、自主的に採点の請負から撤退するのが賢い経営判断でもあるでしょう。このままでは、「国の公的試験でさえこれほど問題点がありながら平然と「できる」と強弁するからには、まして通常の模試業務の杜撰さはいかほどであろうか(いったいどんな採点してるんだ?)」との大方のあらぬ疑いによって本業の信用にかかわる事態に至るのではないかと、他人事ながら懸念いたします。

 ⚫︎追記1:これは「あらぬ疑い」なのではなく、本当にそういう程度なのかもしれません。模試の採点業務を「サクッと稼ぎたい人」向きと言い切るとは、呆れました。
 ●追記2:もはやベネッセ自体が不正ですね。東京新聞(2019年11月21日付朝刊社会面)によりますと、「(ベネッセは)2017年9月に開いた首都圏の高校関係者向けの会合で、配布資料に受注の事実を記載した上、自社の「進研模試」が「入試改革に対応した出題」であることや、「記述力向上のフィードバック充実」をうたっていた」とのことです。また、「学力評価研究機構の社長服部奈美子氏が、ベネッセでは商品企画開発本部長を務めていることも判明。萩生田氏は「利益相反との誤解を受けないような仕組みづくりが必要だ」と述べた」ともあります。(因みに、政治家が自らの非を追及されるたびに何かというと「誤解を与えた」と釈明し、あたかも表現上の問題でしかなく、一般人には微妙な表現差に対する認識力がないかのように論点をすり替えるのは、いい加減やめていただきたいですね。)

それにしても、今、これほど多くの国語科教育関係者等から共通テストにおける記述式問題の不備が指摘されていることを思えば、ベネッセ側の人間が自ら「自社の進研模試が「入試改革に対応した出題」である」と公言する以上、論理的には、進研模試の記述式国語問題自体に共通テストの試行問題における記述設問のひどさや採点法の不備がそっくりそのまま該当することになり、そんな模試を生徒・学校に売ってきたと帰結するのではないでしょうか。なにせベネッセ自ら「営業トーク」でそう喧伝しているわけですから。であれば、不正であり、かつ不備・不適でもあったということです。(そもそも未だ実施されてもいない=見たこともないはずの入試について「〇〇に対応!」などと謳って商売するとすれば、何であれ、ろくなものではないでしょう。模すべき対象の未だ存在しない「模擬」試験や廃棄必至の悪問さながらの「予想」問題集とは、そも何の謂ぞ)

結論:大学入学共通テストへの記述式導入は中止・延期すべきである。また、ベネッセ関連会社を公的試験に関与させてはならない

文科省が最低限妥当な判断を行うべき最後の機会です。